不妊専門鍼灸院 銀のすずは
自然妊娠から体外受精までの方を専門でサポートしています。

慢性子宮内膜炎という病名は妊活中の方であればご存知でしょう。


不妊治療を進めていくなかで、運動が必要ですか?と聞かれることがあります。
実際はどうなのでしょうか?
妊娠への近道であるのなら取り入れたいと考えるはず。
私たち施術者も運動を進めても良いのか、日常生活のアドバイスをする、トレーニングのサポ―トをする際に判断しなくてはなりません。
運動やトレーニングについて考え、またどのように取り入れたほうがよいのか紐解いていきましょう。

「身体を動かす」ことは身体活動を指す。
身体活動は、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての動作のことを指します。また、身体活動は大きく運動と生活活動とに分けることができます。
「運動」は、身体活動のうち、体力の維持や向上を目的として、計画を立てて、継続的に行う活動を指します。
一方、「生活活動」は、ごく普通に日々行っている労働、家事、通勤・通学など日常生活上の体の動き一般を指します。つまり、身体活動=運動+生活活動という関係になります。



「運動」は、さらに、自分にとって適した運動量や強さで健康維持増進を目的とする「エクササイズ」と、楽しむ、競う、上手になる、ルールがあるなどの「スポーツ」に分類できます。 エクササイズは有酸素運動のウォーキングやジョギング、筋力トレーニング、ストレッチングなどの要素を組み合わせて行う運動であり、スポーツには、テニスやサッカー、卓球・野球、ゴルフなどがあります。

身体活動量を増やすことで、さまざまな健康上の効果をもたらすことが医学的に知られています。
では実際に見ていきましょう。



身体活動が全身に影響力があることが理解できますね。

米国スポーツ医学会(ACSM)が「Exercise is Medicine(運動は薬)」と提唱しているように、運動は老化や病気を防ぐための重要な生活習慣であることが知られています。
しかし、実際に体内で何が起こっているのか、メカニズムははっきりとは分かっていませんでした。最近、運動による健康効果を説明する物質として注目されているのが「マイオカイン」です。後ほど紹介します。

ではもう一度確認しておきましょう。
身体活動には、下記の効果が期待できます。
【運動の医学的効果】
・動脈硬化性疾患(心筋梗塞など)にかかるリスクが低下する。
・心肺機能が向上し、感染症にかかるリスクが低下する。
・脳血流、ニューロンが増加し認知症にかかるリスクが低下する。
・体温が上昇し、リラクゼーション効果が得られることで睡眠障害が改善する。
・体脂肪を減らして肥満の予防・改善が図れる。
・ストレスの発散やリラクゼーション効果があり、うつや不安な気分の予防・改善が図れる。
・筋力向上、バランス能力向上により、転倒リスクの低下やロコモティブシンドロームの予防が図れる。
・持久力が上がる
・自律神経機能が整い、便秘が解消する。 
・骨に刺激が加わることにより骨粗鬆症の予防となる。
・乳がんや大腸がんにかかるリスクが低下する。
・脂質異常症、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防・改善。
・筋力向上、筋肉量増大によりフレイルやサルコペニアを予防・改善する。


では、この効果は身体活動の何によって生まれてくるのでしょうか?

身体活動による重要なキーワードはたくさんありますが、代表的なものを上げてみます。
①一酸化窒素
②マオカイン
③自律神経系
④メンタル系
⑤免疫系


運動により上記5つが動き、作用し、身体に大きな影響を与えているようです。

①一酸化窒素の働き
一酸化窒素の生理的働きは多岐に渡り、以下に代表的な作用を紹介します。

血管平滑筋弛緩作用
血小板凝集能抑制作用
血管内皮細胞の血管透過性調節作用
白血球接着抑制作用
白血球などによるスーパーオキシド産生を抑制作用
殺菌作用
活性酸素によるLDLの酸化を抑制作用
ミトコンドリア活性化作用
細胞接着因子(VCAM-1、セレクチン)の発現を抑制作用
酸化LDLやりゾホスファチジルコリン(LPC)が、マクロファージを血管内皮細胞に接着させる作用を抑制作用
細胞内のカルシウム濃度調整作用
筋収縮への影響~筋肉のグルコース吸収の向上~
活性酸素産生低下作用、活性酸素不活化作用
神経伝達物質としての作用
サイトカイン(PGE2、LTB4、PAF、IL-6、IL-8)の分泌抑制作用

とても多くの仕事がある一酸化窒素ですが、体内ではどのように作られるのでしょうか?

不妊鍼灸、妊活鍼灸、銀のすず

野菜から硝酸塩を摂るルートとアルギニンやシトルリンのルートがあります。
食事で行くのも良いし、サプリからも行けますね。
一酸化窒素は妊活としても最高ですね。

②続いて、マオカインについてです。
骨格筋から分泌される生理活性物質の総称。
myocyte(筋)とcytokine(作動物質)が組み合わされた造語。現在、50種類を超えるマイオカインが発見されています。
代表的なものに、「IL-6(インターロイキン6)」、「FGF-21(線維芽細胞増殖因子21)」、「SPARC(スパーク)」、「Irisin(アイリシン)」などがあり、メタボリックシンドロームが改善することにより分泌される「アデポネクチン」も、マイオカインの一種です。
脂肪分解、骨の形成、筋肉の増強、抗炎症作用、免疫力アップ、血糖値の改善、高血糖時の食欲抑制、肥満の予防、動脈硬化の予防、大腸がんの予防、認知症の予防など、様々な効果が期待されています。

マオカイン、不妊治療、妊活鍼灸、不妊鍼灸

直接的ではないものの、抗炎症作用や血糖値のコントロールなどは影響がありそうです。

③自律神経の重要性は誰もが知るところでしょう。
運動をすることにより、心臓や血管、呼吸、発汗の調節や前項にも紹介した一酸化窒素の合成、マオカインの分泌なども自律神経系の働きであり、影響はかなり大きいのがわかります。
逆を言えば、運動をしない場合は起こらないということでもあり、私たちが生きていく場合への悪影響ともいえます。
特にここで紹介したいのは循環血液量です。
運動により、全身へ血液供給が増え、結果、栄養や老廃物の運搬が盛んになります。

不妊鍼灸、不妊治療、体外受精、銀座

やはり、運動は必要なのだと痛感しますね。
しっかり栄養を送り込み、老廃物を排出しましょう!!!

④運動や筋トレの後、なんだか気持ちがスッキリしている……という経験はありませんか?
健康にいいと思われている運動ですが、身体だけでなく精神にもとても良い影響をもたらします。運動がメンタルヘルスの与える効果は多くの研究でも明らかになっています。
アメリカプリンストン大学研究チームの実験では、運動をすることで脳のストレスへの反応が弱まり、不安を感じにくくなることが明らかになりました。
ハーバード大学の研究によると身体活動の多い人や運動を頻繁にする人は、うつ病の罹患率が20以上も低いことが報告されています。

運動がメンタルヘルスに効果的な理由は、生理学的に解明されています。
実際、運動をすることにより、下記の反応が起こっています。
・神経伝達物質の分泌
・心身の疲労バランスの調整

運動によって分泌が促進される神経伝達物質は多く、成長ホルモン、テストステロン、ドーパミン、ノルアドレナリン、βエンドルフィンやセロトニン、BNDF、オキシトシンなどが挙げられます。

何やら不妊治療とも関わってきそうな物質がたくさんありますね。
卵胞や内膜の成長だけでなく、妊娠継続にも影響があり、ぜひ分泌させたいところです。

⑤免疫系は、過去何度か出てきているテーマですね。
運動をすると免疫が上がるといいます。
その理由は、体温上昇と血流量アップが起こることでしょう。
ここで、妊娠と免疫の話をしておきます。

妊娠は、母体と胎児のHLA(ヒト白血球抗原)が完全に一致する確率が微々たるものであるため、「胎児という非自己の移植である」という免疫学的側面を有していますが、この免疫が発動すると妊娠は成立しません。
大部分の妊娠は、母体の免疫系が胎児を拒絶しないメカニズムを持っていることを意味します。
つまり、妊娠時には免疫寛容が重要な役割を果たしています。
この免疫寛容により、母体の免疫細胞は胎児を異物と認識せず、拒絶反応を起こさないようになります。
この反応は制御性T細胞(白血球)によって、他者の遺伝子である精子や胎児を安全に受け入れることができるのです。
妊娠中には、母体の免疫細胞が異物である胎児を認識し、過剰な炎症を抑制し、胎児の免疫寛容を誘導することで妊娠成立が起きます。
エストロゲンも妊娠において重要な役割を果たしています。
エストロゲンは、DC(樹状細胞)に作用してTh2応答を増強し、母体のTh1細胞が胎児を攻撃しないように調整しています。
このようなメカニズムにより、妊娠中期以降に大量に分泌されるエストロゲンは、胎児の免疫寛容をサポートしていると考えられています。

これら自然免疫、獲得免疫、免疫寛容の免疫システムをスムーズに行わせるには、当然ながらエネルギーが必要となります。
例えば、免疫担当細胞である白血球は、自らの細胞内にミトコンドリアを有し、糖、脂肪酸、アミノ酸などを利用し、無酸素下、有酸素下でATPを産生、利用しています。

また、免疫担当細胞が正常に活動できる温度は36.5℃とされています。
それを下回ると免疫担当細胞の活動は低下します。
つまりは免疫力が低下し、感染しやすい環境となります。
また、「平熱時(37°C)と比較して熱発時(38.5°C)の時にマクロファージの貪食能が約30%上がるというデータがあります。
残念ながら40°Cでのデータは発表されていませんが、40°Cだと体細胞へのダメージが起こるため、38.5°C辺りで最適の免疫力が発揮されるようになっていると推測できます。
万が一、38.5℃の発熱が起こった際、免疫システムは過剰に働くと考えて間違いありません。
通常はこの反応は必要な反応ですが、妊娠成立には、過剰な免疫はむしろ害になる可能性があります。

運動は素晴らしいことが分かりました。
しかし、間違えてはいけないのは、自らの筋運動によって体温上昇は良いが、外部から熱を入れるのは間違いだということです。

何かございましたらご質問ください。
銀のすず